太陽光発電の出力抑制

  

太陽光発電投資のリスクになり得る出力抑制は、安定した収益を妨げかねない問題として気になっている人も多いでしょう。ここでは出力抑制が本当に太陽光発電投資のリスクになるのか、出力抑制の基礎知識や必要性、仕組みなどについて解説します。

出力抑制とは

太陽光発電の出力抑制(出力制御)とは、ひと言で言うと「送電をコントロールする制度」です。出力抑制によって、電力会社が発電事業者に対して発電設備からの一時的な出力の停止または抑制を要請できます。出力抑制はあくまでも電力の需給バランスを調整するために行われるものであり、太陽光発電によるエネルギーの買取を制限する目的で設けられた制度ではありません。

出力抑制の必要性

電気には、使う量と発電する量の需給バランスを保たなければいけないという原則があります。なぜなら需要と供給のバランスが崩れると周波数が不安定になり、電気設備に負担がかかることで設備の不調や大規模停電といったリスクを招きかねないためです。基本的に電力は貯めておくことができないため、需給バランスの調整として発電量を抑制・制御する必要があります。

なかでも太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーは天候に左右されやすく、発電量が安定していません。太陽光発電は日光によって自動的にエネルギーを生み出す性質があり、電力需要の下がった時間帯に発電のピークがきてしまうと供給が需要を大幅にオーバーしてしまいます。だからこそ出力抑制によって太陽光発電エネルギーの電力系統への接続を制限することで、電力の需給バランスを調整する必要があるのです。

その一方で、出力抑制は国が掲げている再エネ電力拡大方針に逆行するとして、経済産業省が従来の出力抑制ルールの見直しや電力会社の系統増強を実施し、再エネ電力の受け入れ拡大を図る動きもあります。

出力抑制のルール

出力抑制はどの太陽光発電所に対しても行えるものではなく、対象となる発電所や出力を絞る時間の単位などにルールが定められています。2015年1月26日に再エネ特措法が見直され、一部のルールが変更となりました。

出力抑制の対象となる発電所は発電容量(出力)によって3つに区分され、1つが特別高圧発電所をはじめとする500kW以上の大規模な発電所、2つめが10kW~500kW未満の中規模な低圧太陽光発電所、最後の3つめが10kW未満の住宅用として電力を自家消費するタイプの太陽光発電設備です。

適用される出力抑制ルールは、太陽光発電の容量や電力会社へ接続の申し込みをした時期によって異なります。太陽光発電所によって適用されるルールがどう変わるのか、それぞれのルールについて見ていきましょう。

30日ルール(法改正前の旧ルール)

特別高圧をはじめとする500kW以上の大規模な太陽光発電所が対象となり、年間30日を上限に出力抑制を行えます。30日ルールとは、電力需要の少なくなる年末年始やゴールデンウィークなどを「特異日」として想定し、需給のバランスを調整するために年間30日までは無補償で出力を抑制できるとしたものです。2015年1月の法改正によって出力抑制ルールの単位が日数から時間へと変更になり、現在は申し込みを受け付けていないため、法改正後に新規の申し込みがあった太陽光発電に対しては適用されません。

360時間ルール

30日ルールが法改正によって見直され、無補償での出力抑制の上限が年間30日から360時間に変更。それにより日数ではなく、時間単位で出力抑制を要請できるようになりました。対象となる太陽光発電も法改正前は500kW以上の太陽光発電設備のみでしたが、新ルールでは500kW以下の住宅用を含む、すべての太陽光発電設備が対象となっています。10kW未満の住宅用太陽光発電についても、360時間ルールが優先的に適用されることになりました。

指定ルール

指定ルールでは、指定区域内の太陽光発電において接続申込量が接続可能量を上回る、もしくは上回る見込みがある場合、無制限に出力抑制を要請できます。指定電気事業者制度に基づいて国から指定された地域で適用され、対象となるのは500kW以下の住宅用を含むすべての太陽光発電です。出力抑制の上限がなくなるルールのため、経済産業省は電力会社に出力抑制の見通しの公表を義務化し、出力抑制の透明性の向上を図っています。

電力会社によって違う出力制御ルール

出力抑制ルールは、電力会社の接続可能量によって発電設備ごとの適用が異なります。大手の地域電力会社別に、出力抑制ルールがどのように適用されるのか詳しく見ていきましょう。

東京電力、中部電力、関西電力管内

10kW未満の設備と10~50kW未満の設備は、出力抑制の対象外になります。50~500kWの設備に関しては、2015年4月1日以降に接続申し込みのあった案件から360時間ルールを適用。それ以前の申し込みは出力抑制の対象外です。

500kW以上の大規模太陽光発電設備の場合は、2015年1月26日以降に接続申し込みのあった案件から360時間ルールを適用。それ以前の申し込みには30日ルールが適用されます。

北陸電力、中国電力管内

10kW未満の設備と10~50kW未満の設備に関しては、2015年4月1日以降に接続申し込みのあった案件から360時間ルールが適用されます。ただし、接続可能量を超過した後に申し込まれた案件の場合は、指定ルールの対象です。

50~500kWまたは500kW以上の設備は、2015年1月26日以降に接続申し込みのあった案件から360時間ルールを適用。こちらも接続可能量超過後に申し込みのあった案件に対しては、指定ルールが適用されます。

四国電力、沖縄電力管内

10kW未満の設備の場合、2015年4月1日以降に接続申し込みのあった案件から360時間ルールが適用されます。ただし、接続可能量超過後に申し込みのあった案件に関しては、指定ルールの適用対象です。

それ以外の10~50kW設備、50~500kW、500kW以上の設備に対しては、2015年1月26日以降に接続申し込みのあった案件から360時間ルールを適用。こちらも接続可能量超過後に申し込まれた場合は、指定ルールが適用されます。

出力抑制が起こりやすいエリアと時期などの特徴

出力抑制が起こりやすいエリア

電気は需給バランスを調整する必要があるため、電力需要が限られているエリアでの太陽光発電は出力抑制の対象になりやすくなります。たとえば住人の少ないエリアに設置されたメガソーラーは電力需要に対して供給量が多くなり過ぎてしまうので、出力抑制の対象になりやすいというわけです。電気需要が高い近隣エリアに余剰電力を融通するという手もありますが、それが難しい離島などは出力抑制がかかりやすくなります。

2011年に起こった出力抑制の例を見ると、一番多かったエリアは東北電力管内の29日、次に北陸電力管内の23日となっています。一方で2012年の最多は北陸電力管内の28日、次に中国電力管内が14日、2013年は北海道電力の26日となっており、出力抑制の起こるエリアは一定していません。出力抑制の影響をできるだけ抑えたいのであれば、出力抑制の対象外となるエリアを選ぶというのも1つの手です。

出力抑制が起こりやすい時期

出力抑制がかかりやすい時期は、発電量が最も高まる5月とされています。5月は雨が少ないうえ、気温が高すぎず低すぎないという太陽光発電にとっては好条件が揃っているためです。一方で全国的に過ごしやすい気候が続くことから暖房や冷房が使われず、電気消費量が一番少ない時期でもあります。そのため、電力の需給バランスを調整するために5月は出力抑制がかかりやすい時期とされているのです。

そのほかにも、離島をはじめ出力抑制がもともとかかりやすいとされるエリアでは、春頃から小規模な出力抑制がかかることもあります。ただし、発電量がピークになる時間帯に一時的に抑制される程度なので、期間中ずっと出力抑制が続くわけではありません。また、出力抑制は大規模発電所を中心に制限がかけられるため、小~中規模の太陽光発電所なら出力抑制のリスクは低いと言えます。

ここ最近起きた出力抑制事例

九州電力が公表したデータによると、2018年3月における離島での出力抑制は壱岐島で3回、種子島で19回、徳之島で2回と、合計24回の出力抑制がかかっています。出力抑制を行った理由としては、火力機で出力を調整する措置をとったとしても電気の供給量が需要量を上回ることが見込まれたため、とのこと。どの離島も9時~16時の時間帯に出力抑制がかかっています。

太陽光発電の出力抑制についてのまとめ

出力抑制は大規模な太陽光発電所を軸に行われるため、収益に大きく影響する発電所はごくわずかとされています。ただし、メガソーラーといった大規模な太陽光発電所を運用する場合は、出力抑制がかかった場合の収入減への備えを検討しておくことが重要です。

出力抑制の備えとしては出力制御保険への加入をはじめ、蓄電池設置による夜間売電、太陽光パネルの過積載で発電量を大きく稼ぐという手もあり。なかでも過積載による方法は、太陽光発電システムの価格が下落していることから、規模の大きさを問わずに選択する人が増えています。

太陽光発電の出力抑制は、電力の需給バランスを調整するためのものなのでやみくもに行われる制度ではありません。過剰に心配しないためにも、太陽光発電の仕組みと出力抑制の関係性をしっかり押さえておきましょう。

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