メガソーラー(太陽光発電)におけるM&A

FIT制度によって普及の進んだメガソーラーですが、法改正によって事業を取り巻く状況は厳しくなっています。それでも高利回りを期待できるメガソーラーはいまだに投資対象として注目を集めており、異種業者によるM&Aの動きも盛況です。売却のタイミングを逃さないためにも知っておきたいメガソーラーにおけるM&Aの現状と動向をはじめ、M&Aの注意点や方法、事例などを解説します。

メガソーラー事業とは

メガソーラーとは、1メガワット(1,000キロワット)以上の大規模な出力が可能な太陽光発電所です。1メガワットの出力に対して約2ヘクタールの土地を必要とするため、メガソーラー事業の運営には遊休地や山林、埋立地などが選ばれています。もともと再生可能エネルギーの供給源として大きな期待を寄せられていたメガソーラーですが、2011年に発生した東日本大震災を契機にさらに注目を集めるようになりました。

原子力発電に代わるエネルギーとしての期待が高まったほか、再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT制度)の制定もあってメガソーラー事業に投資する企業が一気に増加。建設に莫大な費用と広大な用地を要する施設でありながら、2019年6月末時点での国内におけるメガソーラーの数は6,000件を超えています。

メガソーラーのM&Aについて

FIT制度により普及が進んだメガソーラーですが、売電価格は年々低下の一途を辿っています。2012年には1キロワット42円だった売電価格も、2019年には1キロワット14円と大幅に低下。経済産業省によると、いずれは1キロワット11円にまで低下すると予想されており、厳しい状況が続いています。

さらに、FIT法の改正によってルールが厳格化し、事業者にメンテナンスを含めた事業計画提出の義務化や出力抑制の導入が課せられるように。事業者の負担が増加しただけでなく、出力抑制の導入によって期待されていた収益の獲得にも影響を及ぼす可能性が出ています。このような状況を受けて、M&A(買収)を活用したメガソーラーの事業譲渡に踏み出す企業は増加傾向。一方で、高い利回りを期待できるメガソーラーを魅力的な投資案件として考えている企業も多く、異業種企業が太陽光発電業界に参入するようになったこともメガソーラーのM&A増加につながっています。

メガソーラーのM&Aの現状と動向

メガソーラー業界の競争の激化

メガソーラーの売電価格自体は年々低下している中、太陽光発電所の建設に対する競争は激化の傾向にあります。理由はメガソーラーの建設に必要なコストが年々減少して、新規参入のハードルも下がっているためです。メガソーラー事業に参入する企業が増えたことで、業界では生き残りをかけてコスト削減の対応が求められるように。競争についていけなくなった企業も多く、メガソーラーへのニーズが高い売り手市場のうちにM&Aで事業売却を行なう動きも強まっています。

倒産する事業者や周辺事業者の増加

FIT制度で盛況を呈したメガソーラー事業も法改正によってルールが厳格化し、特別一括償却制度の廃止に伴う税金の負担増もあって倒産する事業者が増加。帝国データバンクの「太陽光関連業者の倒産動向調査」によると、2018年の倒産件数は過去最高数の95件という結果に。2016年の倒産件数は67件、2017年が88件という数字を見ても、太陽光発電業界が深刻な事態を迎えつつあることが分かります。

特にメガソーラー事業は複数の企業が共同で管理するケースが多いため、1社の倒産によって周辺事業者の連鎖的な倒産を招きかねません。このような深刻な状況を受けて、メガソーラー業界では倒産リスクを避けるためにM&Aでの事業売却が積極的に行なわれるようになっています。M&Aによる倒産リスクの回避策が功を奏し、2016年から年々増加していた倒産件数も2019年には74件と前年比の22.1%減を実現。今後も、M&Aを利用したメガソーラーの事業売却はさらに活発化すると予想されます。

異種業者企業によるメガソーラーM&A事例の増加

メガソーラーは不動産投資よりも高い利回りが期待できることから、異業種から太陽光発電事業に参入する企業が増えています。なかでも事業者ごと買収することで、建設コストをかけずに発電所を稼働できるM&A事例が増加。2015年4月に東京証券所にインフラファンド市場が創設されて以降は出口戦略としてインフラファンドへの事業譲渡を選ぶ企業も多く、メガソーラーのM&Aの盛況にさらに拍車をかけています。一方でM&Aの急増による獲得競争の激化で、高い利回りを見込める優良案件はすでに売却済みとなっているケースが多々あり。利回りの良い案件を探し出すのが困難になっています。

メガソーラーのM&Aの費用相場

メガソーラーにおけるM&Aの相場は、1,000万~5億円ほどと言われています。小規模であれば数百万円から取得でき、大手ほどの資本がない個人でもM&Aが可能です。売買価格は設備や土地の規模によって大きく変わり、事業規模の大きなものだと数十億~数百億円、なかには1,000億円前後で取引されるケースもあります。

すでに稼働している中古メガソーラーの売買相場は、5億~数十億円程度です。固定価格買取制度の期間がどのぐらい残っているか、直近の売電実績によっては取引価格が大きく変わる可能性があります。中古メガソーラーの売電価格の目安には表面利回りが採用されており、売買相場の基準は表面利回り10.8~11.5%程度。稼働期間が3年を超える案件の場合、1年ごとに表面利回り値を0.5%ずつ上げることで相場価格を算出できます。案件によってはプレミアム価格と呼ばれる価格帯で売電取引を行なえるメガソーラーもあり、高い利益率から相場以上の価格で売買されるケースも見られます。

メガソーラーのM&Aの注意点

メガソーラーを売却するタイミング

太陽光発電の売電価格は年々低下しており、FIT制度の改正によってメガソーラーを取り巻く環境は変化を続けています。太陽光発電以外の再生可能エネルギーも発展しつつある今、今後の展開次第では投資ニーズが太陽光発電から別の再生可能エネルギーに移る可能性もあり。そのため、売却のタイミングを逃してしまうと価値のない土地や設備を抱えることになりかねません。良い条件で事業を譲渡したいのであれば、売り手市場のうちに売却を検討する必要があります。

特別一括償却制度の廃止

かつては太陽光発電設備の取得にはグリーン投資減税が適用できましたが、2015年3月31日をもって制度が廃止。基準取得額の30%特別償却についても対象の取得期間が2018年3月31日までとなっているため、現在はメガソーラーの会社や事業を買収しても減税や特別償却制度は適用されません。制度の廃止によって税金の還元や繰り延べができなくなったため、売却や買収を検討する際は注意が必要です。

周辺事業者の減少による設備管理の問題

電力の売電価格は低下の一途を辿っており、設備投資費用の回収が難しくなったことから太陽光発電関連の事業者の多くが撤退や倒産のリスクを抱えています。周辺事業者の数も連鎖的に減少する可能性があり、将来的に設備管理を任せられる事業者が確保できなくなるかもしれません。メガソーラーは複数の事業者が連携して成り立つ事業のため、M&Aを検討する際は周辺事業者を取り巻く状況にも目を向けておく必要があります。

土地の利権関係や事業権利譲渡

メガソーラーのFIT制度の認定を継続させるためには、M&Aで土地・契約・事業権利などをすべて承継する必要があります。権利者からの承諾が得られないとFIT制度の変更認定申請を行なえないためです。土地を含めてメガソーラーを買収する際はM&Aにかかる費用も高額になりやすいほか、土地の利権関係の確認で通常よりも手間やコストがかかることは留意しておきましょう。

欠陥工事によるトラブルの発生

買収したメガソーラーによっては、事業の承継後に欠陥工事によるトラブルが発生する可能性があります。そのため稼働開始前の太陽光発電設備を買収する場合は、M&Aの契約時に欠陥工事が発覚した際の責任の所在を事前に取り決めておくことが重要です。契約内容に盛り込んでおくことで、万が一欠陥工事によるトラブルが発生した場合は売り手に対して補償請求ができます。

周辺住民からのクレーム対応

住宅が密集している地域でメガソーラー事業を運営する場合、周辺住民から反射光へのクレームが寄せられる可能性があります。対応を誤ると訴訟トラブルにもつながりかねないため、M&Aで事業を承継する前には反射光によるクレームの有無を確認しておきましょう。過去にクレームが寄せられているのであれば、パネルの向きや角度の変更が必要になります。新たに太陽光パネルを設置する場合も反射光の影響を考慮した施工法を採用するほか、住民説明会などを設けて太陽光発電事業への理解を求めることも大切です。

メガソーラーのM&Aの方法

案件紹介・案件登録

メガソーラーのM&Aを検討する場合、まずは事業譲渡に関する案件紹介を受ける、もしくは案件登録を行ないましょう。譲渡に出されているメガソーラーにどのような案件があるのかを知ることが、M&Aを進めるうえでの最初の1歩になります。案件によっては着工前の段階のものもあるため、費用対効果が未知数なことを踏まえたうえで買収を検討することが大切です。

仮調査~本調査

次に、気になる案件があれば仮調査を実施します。特に着工前の案件だと実績のないまま買収を検討する必要があるため、仮調査を通じて不安材料を洗い出すことが重要です。仮調査を終えて本格的に事業譲渡や買収を検討する段階に入ったら、次は本調査を行ないます。本調査では具体的な利回りをはじめ、契約年数、権利譲渡の可否などを協議。この段階でしっかり話を詰めておかないと、稼働後の欠陥工事の発覚や周辺住民からのクレームなどに対する責任問題に発展しかねません。

譲渡契約の締結~売電事業開始

本調査が完了してお互いの合意を得られたら、譲渡契約の締結を行ないます。譲渡契約を締結した後は、名義変更の手続きが必要です。買収側が個人または企業や組織のどちらにしても、基本的にはそれぞれの代表者が名義人となって変更手続きを進めていきます。すべての手続きを終え、双方で取り決めた手数料を売り手側に支払ったら事業の権利は買い手側に移行してM&Aは完了。いよいよ売電事業を正式に開始できます。

メガソーラーのM&Aの事例紹介

事例1.とまこまい勇払メガソーラー

2017年にソフトバンクグループのSBエナジー株式会社と三菱UFJリース株式会社の子会社であるMULエナジーインベストメント株式会社が、大規模太陽光発電所事業を展開するとまこまい勇払メガソーラーの全株式を取得。M&Aスキームは株式譲渡と定められ、取得価格は公開されていません。両社は買収目的に再生可能エネルギーの普及と事業拡大、社会インフラの整備を掲げており、実際にSBエナジーが2018年3月末に北海道苫小牧市でメガソーラーの運転を開始。太陽光発電業界での事業拡大を実現しています。

事例2.志布志メガソーラー発電

自社所有の太陽光発電所による売電をはじめ、太陽光発電所の買収、太陽光発電会社への投資事業を展開している株式会社ジー・スリーHDが、2016年12月に志布志メガソーラー発電の未着工太陽光発電所を買収。M&Aによって事業基盤の強化ならびに子会社における太陽光発電関連事業の推進を図っており、環境関連事業を介した社会貢献を掲げています。

事例3.メガソーラー建設計画の買収

昭和シェル石油の連結子会社であるアメリカ法人・ソーラーフロンティアアメリカズが、2018年にシャープの子会社でアメリカの発電開発事業者・リカレント社のメガソーラー建設計画を買収。メガソーラーそのものではなく建設計画を買収した珍しいケースで、稼働後の利益獲得が注目されています。メガソーラーの稼働開始は2020年を予定しており、約3万7,000世帯もの電力を賄える大規模な施設となる見込みです。

事例4.四日市ソーラー匿名組合事業

再生可能エネルギー発電施設の開発・運営をはじめ、売電事業も展開しているレノバが、2019年に四日市ソーラー匿名組合事業を買収しました。M&Aスキームとして株式譲渡が活用されており、全株式の取得によって四日市ソーラー匿名組合事業を子会社化。レノバはもともと大規模な出力を持つ四日市ソーラー発電所の建設・運転にも着手しており、今回の買収でさらなる収益規模の拡大を目指しているとのこと。今後は発電事業者として地域発展の貢献を掲げています。

まとめ

メガソーラー事業を取り巻く環境は、売電価格の低下により年々厳しくなっているのが現状です。倒産や撤退に追い込まれる事業者も多い一方で、メガソーラーの高利回りによる利益獲得や事業拡大を狙ったM&Aが盛り上がりを見せています。今はまだ注目を集めている太陽光発電ですが、ほかの再生可能エネルギーの今後の発展によっては投資対象としてのニーズを奪われかねません。ニーズがなくなってしまってから売却を検討しても希望していた価格で売買できず、負債だけを抱え込む可能性があります。事業譲渡を有利に進めたいのであれば、太陽光発電のニーズが高い売り手市場のうちにM&Aを活用した売却を検討しましょう。

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